今年の秋は日本で一番高い縦走路、南アルプス白根三山を訪れる計画を立てたのが8月下旬。
しかし、その後に台風15号、19号が連続して通過。本州中部から東北にかけて大きな被害を及ぼす。
特に19号はアルプス周辺に爪痕を残し、現地情報を調べれば調べるほど、予定の変更を余儀なくされた。またそれ以上に「被災地に行く」という行為が重苦しく思えた。
一方で2018年の秋、北海道は胆振東部地震で秋の観光は強制的に終了をむかえ、旅行の自粛が自分たちの生活を直撃することを身をもって知った。「山に登り、泊まり、ボランティアもしよう」、そうしたテーマでこの旅は始まった。
この度の台風で亡くなられた方々を悼むとともに遺族の方々、被害に遭われた方々へお見舞いを申し上げます。

結局、白根三山の縦走は南アルプス林道の起点のひとつである奈良田が被災したため、唯一バスが動いていた芦安から北岳にチャレンジしようとするも、その後の雨で再度運休。予約していた小屋もキャンセルし途方に暮れる。
すでに飛行機で東京まで移動後の話で、山行計画をイチから練り直すことに。
練り直しているうちに朗報、芦安からのバスが翌日は運行予定とのこと、再度小屋に予約を入れ北岳を一泊二日で登ることにした。

当日は無事に芦安からバスに乗るも、バスの乗客は計6名。そのうち登山装備を持っていたのは3名。
広河原から北岳に向かい11:00登山開始。
つり橋から遠くに目指す稜線が見えた。天気は良く、風も弱い。
バスに乗っていた添乗員は「今年初の本格的な積雪」と少し興奮気味に話していた。
やはり、山は雪があった方が美しいとも。

台風のため、大樺沢沿いのコースは崩壊し通行止め。
白根御池小屋にいたる尾根コースをとるも、こちらも復旧したての崩壊箇所がいくつか。
台風がもたらした被害を感じながら高度を上げてゆく。
夏山シーズン終盤、すでに営業終了している小屋も出てきている時期に台風被害。
他に登る登山者の姿はなく、下山者も白根御池小屋を過ぎたあたりで出会った数名。
静かな登山でした。

標高2,700mを過ぎたあたりから登山道に積雪がある状況。ただし、この日はアイゼンなしで終日行動。
日本で2番目に高い山目の前に、日本で1番高い山を遠望する。
心配していた高山病も出ることはなく、のんびり歩いて17:00前に小屋着。
小屋での宿泊者はわれら2人と同じバスに乗っていたオランダ人の計3名。
信州や山梨は先日の台風以降訪れる人が激減とのこと。
歓待を受けたことで、来て良かったと少しほっとした。

翌日、7時にオランダ人と一緒に出発し無事北岳登頂。
この日はアイゼンを装着し行動。
持っていないオランダ人にはストックを貸した。
八本歯ノコル方向へ進む。
ずっと富士山は見えていたが、ここのポイントに着いて気づいたことがある。
日本で1番高い山と2番目に高い山の間は雲で覆いつくされ遮るものがないことを。
あわてて同行者にその情景を「カッコよく」撮影するように頼む(笑)。

八本歯ノコル方向から大樺沢へ下山。
前日、小屋では「傾斜のある木製の階段。雪が多いと難しい」とのアドバイスをいただいていた。
雪は凍っておらず、登山者が少ないためか足跡もなし。この日はスムーズに通過。
でも、雪が多かったり登山者による踏み固めがあるなど、雪の状況によっては確かに難しい場所でしょう。
最後は12時のバスに駆け込むように乗車。乗車したのはわれら3名のみ(笑)。
実際はトイレやチケット購入などで手間取り2分ほど出発が遅れましたが、他の乗客もおらず融通をきかせてくれました。
静かな静かな南アルプスでした。